職業 若者は大志を抱くな①

山田洋次時代を駆ける 山田洋次

毎日新聞 2010年(平成22年)1月20日(水)

<映画監督を夢見ていたわけではなかった。山口県の高校から、東京に出たいと東京大学を受験。一浪の後、合格するが、道を探しあぐねて寮の部屋に閉じこもってばかりだった>

 自分とは、生きがいとは、と悩むわけ。勉強も身に付かないし、読書家でもないし、ぼんやりしてたってことじゃないかね、前半2年は。それで寮の友達に懇々と説かれたんだ。「冷ややかに周りを眺めてるだけじゃ、何の解決も生まれない。君はもっと成長しなきゃいけない。そのために行動しなきゃいけない」とね。「行動って何だ」と聞いたら、「サークルに入っていろんな人間とかかわりをもって、自分のテーマを実現するように運動していくことだ」って言うのね。

 映画は人並みに好きだったけど、音楽も美術も深い興味はなかったし、スポーツはやっていない。一番手近な入り口として映画を選んだ。ま、やってみるかってとこですよ。全国の映研(映画研究会)を組織するって夢を掲げてポスター作ったり、印刷物作って全国の大学に送り届けたり。(監督の)今井正さんとか山本薩夫さんの上映活動をやったり、1年ぐらいは忙しくしてたね。でも、うまくいきっこない。ただ夢を実現しようとする中で、変わっていったのかもしれないね。当時夢中で目の前のことをやったのは、マイナスではない気がする。

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長友 泰秀

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